プログラマーやエンジニアの業界で「プログラミング脳」という言葉がしばしば使われますが、「どんなものか、なんの役に立つのかわからない」と思っている人も多いのではないでしょうか。また、「スキルとして身につけたいと思っているが、取り組み方がわからない」という人もいるでしょう。
そんな人に向けてこのコラムでは、プログラミング脳について解説し、プログラミング脳を育成するポイントや、プログラミング脳を鍛える上で好ましくない習慣などを掲載します。ゲーム業界やIT、Web業界で働く人には大変役立つスキルなので、ぜひこのコラムを参考にして育成に励んでください。
「プログラミング脳」とは

そもそも「プログラミング脳」とは、物事に対して論理(ロジック)を組み立てて考える力のことで、論理的思考力とも言われています。プログラミング脳のメリットは、問題解決に向かって最適な方法を選択しやすくなることです。
プログラミング脳を鍛えると、考え方が整理され効率よく行動することに役立つため、仕事上役立つのはもちろんですが、日常生活上のメリットが語られる局面も多数見られます。
プログラミング脳という名称から、プログラマーやエンジニア特有のスキルと思われがちですが、論理的思考力を鍛えることなので、決して特定の職種だけに見られる技能ではありません。そのためITやゲーム業界など実際にプログラミングを行う界隈だけでなく、子育てや教育の場面でも目にする言葉としても知られています。
プログラミング脳を育てるための理論的思考力を培うポイント
プログラミング脳を鍛えるためには、以下の5つのポイントに留意することが重要です。
・対象を分析・分解して整理する
作業を行う際に、その作業の内容を分析・分解すると、作業が消化しやすくなります。例えば漠然と「アプリケーションを開発する」と考えると、何から始めたらよいかわかりにくく、開発にかかる時間や費用の予想も困難です。そこで、仕様の確認や企画、予算やスケジュールの整理、設計やテストといったように要素ごとに分解すると予算やスケジュールを立てやすくなりますし、問題点の整理もしやすいなど、多数のメリットがあります。
・実施に向けて物事を組み合わせる
分析、分解した工程を実施しやすいように組み合わせることもプログラミング脳の育成に役立ちます。例えば前の項目で紹介した例であれば、企画、計画、設計、実装、テストといった具合に組み合わせて整理すると実施しやすくなります。
・行うべきことをシミュレーションする
何らかの作業や開発を行う場合、いきなり開始するのではなくシミュレーションしてみることをおすすめします。シミュレーションを行うと、事前に問題を洗い出すことができますし、作業の効率化も可能です。シミュレーションをするということは、行動を予測するだけでなく行動の結果を予測し、さらにその結果への対応も考えますから、繰り返すことでフローチャートのような考え方が身につきます。
・対象を抽象化して本質を考える
「抽象的」というと、わかりにくいことととらえられがちですが、抽象化とは物事の本質を捉えることです。目の前の案件だけを考えるのではなく、アプリケーション開発全体の共通性やその案件特有の部分を見ることで、あらゆる仕事に対応しやすくなります。
・対象を一般化して誰でもできるようにする
その作業を終わらせて満足するのではなく、ここまでに行ってきた分析や分解などを生かしてその作業を一般化すると、次に似た作業を行うときに役立ちます。
実際にプログラミングを通じてプログラミング脳を鍛えるための流れ

ここからは、実際のプログラミング作業を通じて、プログラミング脳を鍛えるための流れを具体化します。
①プログラムの仕様を理解する
プログラミングを行う際には、まずプログラムの仕様を理解する必要があります。どんな機能が求められているのかわからなければ企画や詳細設計ができませんし、「どんなプログラムを作るべきなのか」というゴールの設定も不可能です。
また、仕様を理解してどんなプログラミングを行うべきなのかがわからなければ、必要な環境を整えることもできません。そのため仕様の理解は最初に行うべき作業であり、プログラミング脳育成の第一歩となります。
②ロジックの確認をする
仕様に沿ってロジックを組み立てた後は、そのロジックを確認する必要があります。ロジックが間違っているとそれ以降の作業も滞りますから、自己確認だけでなく第三者の目でも確認してもらうことをおすすめします。
とはいえ、プログラミングに慣れていない人やプログラミングに関わる業界以外の人には、「ロジック」という言葉はわかりにくいものです。「ロジック」は「論理」と訳されるため、「論理」という言葉の一般的意味である「筋道」、「筋立て」が想起されます。一方プログラミングにおいての「ロジック」は、プログラムで行うべき処理の手順や内容を指します。言い換えると、「もし○○なら△△する」という条件分岐を流れで示すのがロジックであり、それを可視化したのがフローチャートです。
特にまだプログラミングになれない人の場合、確認しながらロジックの組み立て方を考える回数を確保することが非常に重要です。そのため、できればプログラミングに慣れている人にロジックを確認してもらい、都度問題を指摘してもらえる環境を作ることもプログラミング脳の育成に役立ちます。
③フローチャートを構築しフローの最適化をする
プログラミングを行う際には、工程の細分化とフローの構築が欠かせません。フローを最適化するにはフローチャートを書いて目に見える形にするとよいでしょう。
そもそもフローチャートとは、プログラムの流れを示すので「流れ図」とも呼ばれます。プログラミングだけでなく業務の流れを示す際にも使用されますが、プログラミングを行う際にはロジックを可視化することに役立ちます。そのため、フローチャートを構築する工程は、プログラミング脳の育成において非常に重要です。
また、フローチャートではプログラムが順次流れていく内容を書くだけでなく、条件分岐や繰り返しを明確にするこうかもあるため、しっかり作っておくことでその後のコーディングが進めやすくなります。
④実際にコーディングする
ここまでに考えたロジックとフローチャートをもとに、実際にコーディングしていきましょう。コーディングとは、使用するプログラミング言語のルールに従い、ソースコードを書いていく作業です。
ソースコードという言葉もプログラミングに慣れない人にはわかりにくいですが、プログラミング言語で記載するテキストファイルを示します。ソースコードは人間が理解しやすい形で書かれますが、最終的にはコンピュータが理解するマシン語に変換・実行されます。
プログラミング脳の育成において、仕様を理解して内容を細分化し、ロジックとフローチャートを踏まえてコーディングしていく流れが特に効果を発揮します。実際のプログラミングにおいては、各処理におけるコーディングを行うことでプログラミングが進んでいきます。その際、それぞれの処理ごとにコメントを記載しておくと、便利です。
⑤コードを改善する
コーディングをした後には、無駄なコードを省略したり、機能追加などを行ったりしてアップデートを進めましょう。コードの改善を習慣化することで、プログラムが読みやすくなりますし、効率も向上します。
コード改善作業における、読みやすさやわかりやすさ、効率化や冗長な部分の整理などの品質を追求する作業は、全体の理解と構築・再構築を行うことなので、プログラミング脳を鍛えるための効果的な作業です。
プログラミング脳の成長に寄与しない習慣・行動パターン

実際にプログラミングの業務に関わっていても、プログラミング脳の育成があまり進まないケースもあります。それは当コラムの「実際にプログラミングを通じてプログラミング脳を鍛えるための流れ」で示す取り組みができていないだけでなく、プログラミング脳を鍛える上で好ましくない行動をしている例もあるからです。
そこでこの項目では、プログラミング脳の育成に寄与しない習慣や行動パターンを具体的に記載して注意喚起を行います。
頭で考える前に答えをすぐに探す(検索をしてしまう)
迷ったこと、わからないことを素早く検索して最適解を求め、早急に解決することは業務上悪いことではありません。しかし、自力で考えることを放棄して、安易に結論だけを求めて検索し、検討や考察を行うことなく他者の提示したものを取り入れる行動はプログラミング脳の育成には好ましくありません。
例えば、最初に使ったコードが適切ではなかったとしても、それを単純に無価値として新たなコードを検索して探すのではなく、コードの特徴を把握して利用価値の有無を考えることをおすすめします。情報を吟味し、構築や再構築を繰り返しながら自分なりの結論にたどり着くことが、プログラミング脳を鍛えることになるからです。
目的・目標を設定していない
目的や目標が設定されておらず、「目先のプログラミングを終わらせること」だけに意識が向いていると、プログラミング脳は育成できません。与えられた仕事を早く終わらせようとするのは良いことですが、「やっつけ仕事」に徹するばかりでは、まずプログラミングスキルが向上しません。
さらに、仕様の分析や分解のほか、ロジックの組み立てなどをその都度細かく行い、フローの検討やコーディングなどを考えながら開発を進めることが、プログラミング脳を育てることに直結するのです。
コピペを頻用している
プログラミングにコピペを多用していると、プログラミング脳の育成に関して好ましくないと言われています。
実際の作業場では、フレームワークと使っている言語が同じであれば、コピペでも動作するプログラムが作れるケースはあり得ます。しかしその行動はプログラミング脳を育てる上ではプラスにはなりません。プログラミング脳はロジックを考え、物事の構築と再構築を続けることで鍛えられていくため、それらの工程を重視せずコピペに頼ってばかりだと、論理的思考が形成されないのです。
プログラムの組み方には正解があるわけではありませんし、作る人によって異なっても問題ありません。しかし、プログラムを処理するコンピュータは、コードを順次読み込んでいくこと、すべてにロジックが必要なことなどの固定の特性がありますから、それを理解することがプログラミング脳を習得するカギです。
もちろん、コピペのすべてが悪いわけではありません。コピペすることで効率よく仕事ができると考えれば、それは論理的考え方のひとつとも言えるでしょう。しかし、コピペだけに頼っているとスキル向上の機会を逃しますし、考える力が鍛えられないため、プログラマーやエンジニアとしての成長が阻害されがちです。つまりコピペを多用する行動は一見効率的に見えても、実は短期的な範囲にとどまるもので、長期的には効率的とは言えません。
これを踏まえて、プログラミング脳を育てたいと思う人は、ロジックの組み立てやフローの構築などに前向きに取り組みましょう。
相談しない・相談先がない
プログラミングを進める上で何らかの問題があるときや、考え方に行き詰ったとき、プログラミング上位者に相談することはプログラミング脳を育成するうえで重要な要素です。
自力で考えて自己解決することも大事ですし、考える前に安易になんでも聞くのは良い行動とは言えません。しかし、一旦自力で打開策を考えたうえでプログラミング上位者に教えを請えば経験として深まりやすいので、人に聞くことには大きな意味があります。
また、自分の考えと相手の考えが違う場合、何がなぜ違うのかを確認することもプログラミングスキルとプログラミング脳を発達させることに役立ちます。
プログラミング脳が仕事に役立つタイミング

プログラミング脳を鍛えると、論理性を追求する力と効率よく仕事をする力が身につくため、問題が起こった際にそれを解決しやすくなります。問題の原因や状況を分析し、解決に向けた策を組み立て、そのシミュレーションを行うことで解決をスムーズにする行動は、プログラミングを行う際に必要な行動と共通性があるからです。
またプログラミング脳を育成すると、起こった問題に対処するだけでなく、これから起きる問題を予想して防止策を提示したり、顧客やチーム内の要求実現に役立つ提案をしたりするスキルも上がるでしょう。さらに、論理的思考によって無駄な争いや相手が不快になる状況を回避するなど、コミュニケーション上も有利ですし、情報の取捨選択もしやすくなるでしょう。
これらを整理すると、プログラミング脳を鍛えるとプログラマーやエンジニアとして成長できるだけでなく、社会人として生きる上での有効な力が数多く獲得できます。
【まとめ】プログラミング脳を鍛えて仕事や私生活を充実させよう
プログラミング脳を育成・獲得すると、論理的思考ができるため、仕事や私生活の様々な局面で役立ちます。「プログラミング脳」という名称から、プログラミングに携わる人だけの特殊なスキルとも思われがちですが、決して専門職に就く人だけが獲得できる特殊技能ではなく、だれもが鍛えることができるスキルです。
「プログラミング脳を鍛えたい」、「仕事に効率的に取り組みたい」と思っている人はぜひ当コラムを参考にして、プログラミング脳を育成・獲得してください。