「コーディング」という言葉はプログラミングを行う上で重要な意味を持ちますが、プログラミングに慣れない人にとっては、「プログラミングとの違いが分かりにくい」と感じることもあるでしょう。
そこでこのコラムでは、コーディングとプログラミングの違いを解説したうえで、その勉強方法や、コーディングが役立つ仕事内容なども紹介します。
コーディングとプログラミングの違い

ここではまず、コーディングとプログラミングの違いから解説します。
まず位置づけとしては、コーディングはプログラミングの中のひとつの工程です。そのため、コーディングよりプログラミングは大きい概念であることをご理解ください。
実際の行動としては、アプリケーションやソフトウェアを作るにあたって、コーディングはコンピュータに指令を与えるためにソースコードを書く作業です。一方プログラミングは、仕様に沿って企画を立て、目的を達成するためのロジックを構築し、それらをもとにしてコーディングやテスト、デバッグなどの作業を行ってアプリケーションやソフトウェアを作成していくことが仕事です。
プログラミング全般の作業を行う職種をプログラマーと呼びますが、コーディングだけに特化している人をコーダーと呼ぶ企業や職場もあります。そのためプログラマーの仕事にコーディングが含まれる一方、職業としてプログラマーとコーダーが判別される職場は存在します。
コーディングを行う上では、コンピュータに指示を与える言語をあつかえることが欠かせませんが、特に必須とされるのはフロントエンド言語と呼ばれるHTMLやCSS、JavaScript、jQueryなどです。
以下では、コーディングと関係が深い上記4つの言語について概要を記載します。
HTML
HTMLはWebサイトの文章や枠を指定する言語で、マークアップ言語とも呼ばれます。HTMLでは、「タグ」と呼ばれるコンピュータに指示を与えるためのアルファベット等の文字を組み合わせた「マーク」を使って、文章構造を指示します。
例えばタグには、タイトルを示す「title」や見出しを意味する「h1」「h2」「h3」、リストに用いる「ul」や「li」などがあります。また、開始タグ「<>」や終了タグ「</>」などを駆使することで、必要な情報をブラウザ上に表示させることができます。HTMLのタグは100以上存在するため、必要に応じて使い分けることが重要です。
HTMLを活用すると、Web制作ツールがなくてもWebサイトを作ることが可能です。また、構築者以外が更新できない制限があるため、セキュリティを考える上でも有効です。
CSS
CSSはWebサイト上にデザインを表示するために使用する言語で、スタイルシート言語とも呼ばれます。ちなみに前述のHTMLとここで記載するCSSはプログラミング言語には分類されないのでご注意ください。
CSSを使うと、表示する文字の色を指定したり、大きさを変えたりできます。また、背景の指定などもCSSで指示可能です。
このように、CSSは文章の部分をあつかうHTMLに対して、装飾や見え方を指定します。CSSを上手に活用できればWebサイトのメンテナンスが容易になりますし、PCやスマートフォンなどデバイスに応じたスタイル指定もできます。さらに、ソースコードの軽量化ができてページの表示が速くなるため、検索エンジンの評価が向上しますからSEO対策としても有効です。
JavaScript
JavaScriptはHTMLやCSSとは異なり、プログラミング言語に分類されます。Webブラウザ上で動作できるスクリプト言語であるJavaScriptは、Webサイト上でアニメーションや動的操作を表現できます。例えば、異なるページに移動する際にゆっくり動作させたり、ドロップダウンメニューを表示したりするときにJavaScriptは有効です。
JavaScriptは汎用性が高く、サーバーを介することなく動作確認ができるためプログラミング初心者にも扱いやすいメリットがあります。ブラウザ環境とエディタがあれば操作できる点でもハードルが低く、世界の各地で利用されているプログラミング言語です。
jQuery
jQueryは、JavaScriptを使って記述した内容を、短いコードでの記述を可能とするJavaScriptのライブラリです。
ちなみにプログラミングにおいて使用される「ライブラリ」とは、プログラミングでしばしば利用される機能を活用しやすいようにまとめたものです。ライブラリを使うとすべてをゼロから作る必要がなくなるため、プログラミングの効率化ができます。
jQueryを使用すると、CSSを動的に変更することができますし、Webサイト上にアニメーションを実装することも容易です。また、jQueryは、Google ChromeやAppleのSafari、MozillaのFireFoxなどさまざまなブラウザで利用できますし、どのブラウザでも同じコードで同じ動きができるメリットを持っています。
コーディングを勉強する上でのポイント

ここからは、コーディングを勉強するうえでポイントとなる点を解説します。
自分に合った勉強方法を見つける
コーディングの学習方法は、主として独学とスクールで学ぶスタイルに分けることができます。さらに独学は学習サイトを利用する場合と、書籍を使って学習する場合に分類可能です。以下ではそれぞれの特徴やメリットを記載しますので、自分に合った勉強法を見つける手掛かりにしてください。
独学(学習サイト利用)
コーディングを学ぶための学習サイトは複数存在するので、独学を助けるツールとして多くの人に利用されています。
コーディングの学習サイトとして知られているものには、「Progate」や「CODEPREP」のほか「ドットインスクール」などがあります。これらの学習サイトにはそれぞれに特徴がありますが、一つの項目を数分程度にまとめていることが多いので、手軽に勉強できるメリットがあります。また、知識だけでなく実際のコーディングも学べるように作られているものも多いので、ひととおり消化すればある程度のスキルを獲得可能です。
さらに、無料で学べるものがあることや、オンライン環境さえあれば場所と時間を問わず学べることなど、メリットが豊富です。
独学(書籍学習)
コーディングについて記述した書籍は無数にあるので、書籍から学習する方法をとる人も少なからず存在します。動画やオンライン講座などは提供する側が用意した尺を見なければ全体像を把握できませんが、書籍は飛ばして読むことができるメリットを持っています。
もちろん、初心者が全体像を理解するうえでは、順を追って全体を読むことをおすすめしますが、書籍が持つ特定ページの特定行だけを何度も見ることに適した特性は動画やオンライン講座では得難いポイントです。
また、人間には個々の特性として、視覚情報からの理解がしやすい人と聴覚情報のほうが理解しやすい人がいます。また、視覚情報でも文字中心の情報の理解が得意な人と、そうでない人も存在します。
視覚より聴覚のほうが優位であれば、音声情報を含む学習サイトの利用が有利かもしれませんが、視覚情報と文字情報の処理が得意な人なら書籍を使った学習が高効率でしょう。
プログラミングスクール(オンライン含む)
プログラミングやコーディングを学ぶ場合、オンラインを含むスクールを受講するのも代表的な手段のひとつです。ほかの方法より費用が掛かることが多いですが、カリキュラムに沿って講師から学ぶことで体系的な知識が得られますし、わからないときや困ったときに相談できるメリットもあります。
また、先に受講料を払って決まった時間に受講するスタイルのほうが、自由度が高い独学より挫折しにくいと感じる人もいるでしょう。そのためモチベーションの維持に自信がない人にもスクールの受講はおすすめです。
さらに、「自宅で学習すると集中できない」といった悩みをもつ人なら通学型のスクールがおすすめです。特定の場所に足を運ぶ手間はかかるものの、直接対面して学ぶほうが高効率であると感じる人は多いですし、同じ目的で通う人と会えることから人脈が広がる機会も得られます。
目標や期限をしっかり立てる
プログラミングやコーディングを学び始めるときには、目標や期限を定めることが重要です。例えば、現状の仕事に満足していないことから、プログラミングやコーディングを習得して転職を考えるとします。
その場合、どんな会社に行きたいか、どんな職種を選ぶのかで学ぶべき内容が変わります。また、経済面や精神面で余裕があるなら「1年かけてしっかり勉強する」といった選択が可能ですが、そうでない場合はより急ぐほうがよいでしょう。
これらのバックグラウンドやライフスタイルを踏まえて、〇ヶ月で〇〇を習得する、といった目標を掲げ、そこに向かって実現可能なスケジュールを立てれば、途中で挫折するリスクを低減できます。
インプットだけでなくアウトプットも意識する
コーディングを学ぶ際には、インプットだけでなくアウトプットも意識することが重要です。コーディングに関して、インプットとは知識の補給であり、アウトプットは実際にコーディングを行って形にすることです。見たり読んだりして理解している情報でも、実際に使ってみると思うようにいかないことがありますし、使いながら試行錯誤することで実践的になります。
学習方法がスクール受講であれば、多くの場合コーディングを実際に行う場が用意されていることが多いですが、独学の場合意識的にアウトプットしないと、インプットだけに偏りがちです。
具体的な方法としては、課題をこなす実践方法や、既に存在するものをまねてアプリを作る方法、ゼロから自力で論理やフローを考えてコーディングまで行う方法など、さまざまな取り組み方があります。また、他者に見せても問題ない内容であれば、コーディングでアプリを作成した後にSNSなどで公開してみるのもよいでしょう。それによって客観的評価が得られますし、親切な人からアドバイスを得られるケースもあります。
トライアンドエラーの精神を大事にする
コーディングを学ぶ上では、トライアンドエラーの精神が非常に重要です。まず、目的の動作や表示ができなかったとしても、やり方を変えてゴールにたどり着くことに意味があります。
また、ある程度目的を達したとしても、コーディングはさらにブラッシュアップすることができます。冗長な部分を整理したり、機能を追加したりすることでコーディングが洗練されていきますし、よりよいものを目指すことがスキルアップにつながります。
さらに、最初は調べながらしかできなかったことも、トライアンドエラーを繰り返す中で自分の技能として吸収されていきます。自分なりに考える作業を連続して行っていれば、目の前にあるアプリ作成だけでなく、プログラミングやコーディング自体を効率的に考えられるプログラミング脳の育成にも役立ちます。
頼れる人やサイトを見つけておく
コーディングを学ぶ上で、特に独学で学んでいる人は困ったときに頼れる人やサイトを見つけておくことが重要です。安易に人に頼らず自力で考えて解決する姿勢も大切ですが、初心者が自己完結だけに偏ることはコーディングのスキル向上を考える上では望ましくありません。ぜひ自分よりも技能が高い人や、参考になるサイトを見つけて、幅広い対応を学びましょう。
コーディングのスキルが活躍する仕事

この項目ではコーディングスキルを習得した人が活躍できる仕事を紹介します。
Webコーダー・HTMLコーダー
コーディングスキルを生かせる仕事のひとつに、WebコーダーやHTMLコーダーがあります。
WebコーダーやHTMLコーダーは、Webデザイナーが提示するデザインを仕様書に沿ってコーディングしていく仕事です。これらの仕事は未経験でも比較的始めやすいため、異業種から転職する人、初めてITやWeb業界で仕事をする人にもチャンスが豊富です。
WebコーダーやHTMLコーダーとして経験を積んでいけば、Webデザイナーやプログラマーなどにキャリアアップする道も開かれますから、将来的に収入を上げていきたい人にもおすすめです。
フロントエンドエンジニア
フロントエンドエンジニアは、Webサイトを閲覧するユーザーが見たり操作したりできる部分をあつかう職種です。対義語としてバックエンドエンジニアがあり、バックエンドエンジニアはサーバー側などの業務を担当します。
フロントエンドエンジニアは当コラムで紹介したHTMLやCSS、JavaScriptなどを駆使してWebサイトの構築などを行います。
Webデザイナー
Webデザイナーは名称の通りWebサイトをデザインする仕事です。Webデザイナーの作業範囲は広く、Webサイトの大まかなデザインや全体ボリューム、キービジュアルなどの決定を行うほか、ブランディングや操作性の向上などさまざまな点で活躍します。(作業の範囲は会社や職場によって異なります)
上記の作業の中で、Webサイトの構築や操作、見せ方に絡むこともあるためコーディングのスキルがあることも重視されます。
アプリケーションプログラマー
アプリケーションプログラマーは、名称が示す通りPCやスマートフォンで使用するアプリケーションをプログラミングする職業です。ひとくちにアプリケーションといってもブラウザ上で動くWebアプリや、インストールを前提とするネイティブアプリ、上記を組み合わせたハイブリッドアプリなど多数の種類が存在します。
しかし上記のどの分野であってもコーディングの実践は欠かせませんから、アプリケーションプログラマーにとってコーディングスキルは重要な要素です。
【まとめ】コーディングはプログラミングの工程の一部!スキルを身に着け仕事に活かそう

プログラミング業界で使用される「コーディング」という言葉や仕事の内容についてまとめました。コーディングはプログラミングに含まれる工程の一部であり、使用する言語のルールに沿ってコードを記述していく仕事です。
コーディングスキルを身につけると、ITやWeb業界のほか、ゲーム業界などで活躍できるチャンスが広がります。コーディングスキルの学習方法や習得した後の活躍の場はさまざまですから、ぜひ自分の資質に合った学習方法を選択し、就職や転職に役立ててください。