エンジニアとプログラマーという職種は混同されがちで、「明確な違いはわからない」という方も多いと思います。そこでこのコラムでは、エンジニアとプログラマーの定義を確認したうえで、仕事内容、スキル、関連資格、キャリアパスなど項目ごとに違いを解説します。
エンジニアとプログラマーの定義
ここでは、まずエンジニアとプログラマーの定義を明らかにします。
なお、エンジニアの中には機械エンジニアや土木エンジニアなど多様な職種がありますが、ここではシステムやIT、Webなどの分野に限定しますので、ご了承ください。
エンジニアとは
「エンジニア」とは、システム開発やITなどの技術者を指す言葉であり、広義にはプログラマーも含みます。エンジニアの担当範囲は、クライアントや社内の業務依頼者からの仕様の聞き取りや、要件定義や設計などです。また開発中、開発後の問題解消や改善などに尽力する場合もあります。
ひとくちにエンジニアといっても、ITエンジニア、システムエンジニア(SE)、Webエンジニアなどの種類があります。
「求人ボックス給料ナビ」によれば、2025年4月22日現在、ITエンジニアの平均年収は470万円、システムエンジニアは518万円、Webエンジニアは545万円と報告されています。
プログラマーとは
プログラマーはエンジニアの指示に沿って、プログラミングやコーディングを行います。このため、エンジニアの担当分野を上流工程、プログラマーの担当分野を下流工程と呼ぶこともあります。
「求人ボックス給料ナビ」によれば、2025年4月22日現在のプログラマーの平均年収は469万円でした。
国税庁が発表している「令和5年分 民間給与実態統計調査」(2025年8月31日現在、国税庁が出している情報では最新)では日本の給与所得者の平均年収は460万円なので、プログラマーは日本の平均的な年収を得られる仕事だとわかります。
エンジニアとプログラマーの違い①仕事内容

ここからは、エンジニアとプログラマーの仕事内容の違いを解説します。
なお、会社や部署によって、エンジニアとプログラマーの仕事の範囲が異なる場合もあるため、業務範囲にこだわりがある人は、募集要項などを細かく確認することをおすすめします。
エンジニアの仕事内容
エンジニアの仕事内容は開発の流れを作り、管理しながらゴールを目指すことです。発注者との打ち合わせや仕様の整理を行い、仕事の流れを作る役割があることから、上流工程と言われます。実際の内容は多岐にわたるので、以下に箇条書きでまとめます。
・クライアントや社内の業務依頼者からのヒアリング、折衝など
・要件定義やシステム設計
・仕様書の作成
・下流工程への指示
・開発中の問題解消
・システムテストやデバッグの設計監理
・開発後の問題解消や改善
・その他、チーム全体の調整など
プログラマーの仕事内容
プログラマーはエンジニアが作った仕様書に基づいてコーディング作業や、テスト、デバッグなどの実務を担当します。ゼロから流れを作り出す役割ではないため、下流工程と呼ばれることが多いです。
エンジニアとプログラマーの違い②必要なスキル
ここからは、エンジニアとプログラマーに必要なスキルの違いについて解説します。
エンジニアに必要なスキル
エンジニアは技術職なので、システム開発を行うための技術力が必要です。しかしそれ以外にも必要なスキルが多数あるので、以下に書き出します。
・要件定義力
論理的思考力、理解力、流れを作る力、要求を具現化する力、必要なことを列挙できる力
・システム設計力
ソフトやハード、ネットワークやデータベースなど、必要な技術の理解。システムを実現させる技術力
・マネジメント力
工程や予算を管理する力、開発全体を見通す力
・コミュニケーション力
発注者との折衝やチーム内の打ち合わせを円滑に進める力
・問題解決能力
システム上の問題や開発上の問題を解決に導く力、臨機応変さも重要
・学習能力
業務遂行のために必要とされる知識、新しい技術などを学習する力
・分析力
問題の解消や、システムを改善するために、課題や現状を分析する力
技術職のイメージが強いエンジニアですが、ずっとPCに向かい合っているわけではなく、クライアントやチームメンバーとの打ち合わせなども行わなければなりません。そのため、上記のようにコミュニケーション能力や折衝力、論理的思考や問題解決能力など、いわゆるソフトスキルも要求されます。
プログラマーに必要なスキル
プログラマーはエンジニアが作った仕様書に沿って開発を実施していく役割を担います。そのため、必要なプログラミング言語を理解し、コーディング作業がスムーズにできることが求められます。ライブラリやフレームワークを効率よく活用できる応用力があると、チームへの貢献度も上がるでしょう。
プログラミング言語は複数あるので、JavaやPythonなど多くの言語の中から必要に応じて学習し、アルゴリズムやデータ構造の理解を深めることが重要です。
また、プログラマーには論理的思考や、問題点を把握し、解決に向かって工夫する力も必要です。これらのスキルはすべて向上心や理解力に支えられますから、プロフェッショナルとしてスキルアップを望む意欲が高いほど活躍できます。
エンジニアとプログラマーの違い③資格
この項目では、エンジニアとプログラマーに役立つ資格を紹介します。
エンジニアに役立つ資格
エンジニアとして活躍するうえで役立つ資格には以下のようなものがあります。
情報処理の基本知識と技能を証明する、登竜門的な国家資格です。
基本情報技術者より高度な技術が問われる上級者向け資格です。
システム開発のプロジェクトを進行するリーダーであるプロジェクトマネージャ向けの資格です。
上流工程を管理・主導する上級者向けの資格で、システム開発を円滑に進めるための知識や実践的スキルが要求されます。
クラウドプラットフォームとして広く活用されているAWSの認定資格で、ソリューションアーキテクトやデータエンジニアなど分野に特化した資格が多数存在します。また、初心者、中級者、上級者、スペシャリストなどレベルに応じた選択も可能です。
データベースで高いシェアをもつORACLEのスキルを問う資格試験です。基礎的なレベルであるブロンズとシルバーは条件なしで受験できますが、ゴールド以上は一つ下のレベルに合格していなければ受けられません。
ネットワークやセキュリティに関する国際資格、セキュリティの分野ではCCNP Security、CCIE Securityが有名です。
高度IT人材としての専門性があり、経営戦略や事業の最適化などを考える人や業務の基本戦略を検討する人向けの資格試験です。
高度IT人材としての専門性があり、ネットワークやセキュリティなどを含む情報システムの企画や要件定義、開発や運用などを行う人向けの資格です。プロ向けで高難易度ですが、それだけに高い価値があります。
プログラマーに役立つ資格
プログラマーとして持っていると役立つ資格には以下のようなものがあります。
ITに関する基本的な知識を証明できる国家資格です。IT業界未経験者にもおすすめです。
情報処理の基本知識と技能を証明する、登竜門的な国家資格です。
JavaまたはC言語の基礎知識を問う試験です。3級の試験は年に2回開催されています。
PHPプログラミングの基礎知識を問うレベル1、準上級者向けのレベル2、上級者向けのレベル3があります。
Pythonの専門知識を問う資格試験です。基礎試験、データ分析試験、実践試験、データ分析実践試験の4種類があります。
Ruby技術者としてのスキルレベルを問う試験です。基本技術を確認するシルバーと、高い技術をもつ人向けのゴールドがあります。
エンジニアとプログラマーの違い④キャリアパス
この項目では、エンジニアとプログラマーのキャリアパスの違いを解説します。
エンジニアのキャリアパス
エンジニアのキャリアパスとしては、技術職としてスペシャリストを目指す方向と、管理・統括などを主とするジェネラリスト方向に大きく分けることができます。
いずれにしても、まずエンジニアとしてのスキルを磨くのはもちろんですが、技術職のまま知識や経験などの専門性を高め、スペシャリストとなってリーダーや技術部門の責任者として活躍する人がいます。
職種的には、エンジニアからプロジェクトマネージャとなり、社内で立ち位置を上げていくケースや、ITコンサルタントなどにキャリアチェンジするケースも見られます。
ジェネラリストはスペシャリストのように特定技術を極めるのではなく、幅広い知識を持って活躍できる人です。ジェネラリストは管理職として抜擢されることも多いので、将来的に経営に関わることも不可能ではありません。
プログラマーのキャリアパス
プログラマーとして活躍する人は、まず上流工程であるエンジニアへのキャリアアップを目指す人が多いです。そのためには、与えられた業務をしっかりこなしつつ、システムの全体像や仕様書の書き方、要件定義や設計の仕方も学んだほうが良いでしょう。
エンジニアになったあとは、技術を極めてスペシャリストを目指すか、マネジメント方向を目指していくかに分かれます。また、独立起業、フリーランスを目指す人もいます。
エンジニアとプログラマーの需要と将来性

日本では少子高齢化、人材不足が長く叫ばれていますが、いまだその解決は見えていません。そのためITやWeb業界でも人手不足が顕著であり、エンジニアもプログラマーも需要が高い職業として認識されています。また、世の中全体がITやIoTなどのテクノロジーを求めていることもあり、エンジニアやプログラマーの需要は今後も大きいまま推移すると予想されています。
経済産業省 商務情報政策局 情報処理振興課が提出している「IT人材育成の状況等について」という資料では、日本のIT人材は2030年まで数十万人単位で不足が続くと予想されています。またその中でも特に、ビッグデータ、IoT、人工知能、情報セキュリティなどの分野での人材不足が叫ばれています。この点を踏まえて、もし人材不足がさほど見られない分野にいる人は、需要が高い分野にシフトしておくのもおすすめです。
プログラマーについては、習得している言語で需要が大きく異なる点にも着目すべきでしょう。
2025年現在、特に需要が高いプログラミング言語としては、以下の5種類があげられます。
・Java…拡張性や安定性が高いので、幅広い業界で使われている言語です。
・Python…データ分析やAIなどに用いられる言語なので、近年需要が高まっています。
・JavaScript…Web開発のフロントエンドで高い需要をもつため、求人が多い言語です。
・PHP…Web開発のサーバーサイドで活用される言語です。学びやすい点でも知られています。
・Ruby…中小規模のプロジェクトに向いているので、スタートアップ企業のシステムに広く利用されています。
ただし、AI技術の急激な進歩によって、脅かされる職種もあります。すでにAIによってある程度のコード生成は可能となってきているので、簡単な作業しかできないプログラマーは淘汰されていくかもしれません。
これを踏まえて、新しい技術の進歩に目を光らせることや、将来も需要が高い職種へのキャリアチェンジを考えることも重要です。
まとめ
エンジニアとプログラマーの違いについて、定義、仕事内容、スキル、資格、キャリアパスの4つの視点からまとめました。
ITやWebなどの業界では、エンジニアはクライアントとの打ち合わせや要件定義、設計などの上流工程を担当し、プログラマーはエンジニアが出す仕様書に基づいてプログラミングを行います。
プログラマーの平均年収は日本の平均と同程度である一方、エンジニアは職種によって高収入が望めます。
また、エンジニアもプログラマーも将来性は高いと思われますが、AIの進歩によって簡単な仕事は淘汰される可能性もあります。これを踏まえて、これからエンジニアやプログラマーを目指す人、今現在活躍している人は、将来を見据えたキャリアプランを立てておきましょう。